影響力の武器第4章 人はどんな時集団に流されるか
そろそろ、飽きられてきているのを承知で書きます。影響力の武器第4章についてです。かなり久しぶりですね。もし、飽きられているのであれば、それは僕の文章力の問題です。決してこの本のせいではありません。前回まで、1章~3章の内容を書いてきました。嬉しい事にこのブログを読んで、図書館に予約して本を借りたという人もいました。
ただし、本の分厚さに圧倒されてまだ読んでないとの事。そうなんです。すんごい分厚いんです。この本。
読み始めるのに、なかなかの覚悟がいるレベル。ただ書いている事はかなり勉強になります。一言で言うと経済ベースの心理学本っていうところでしょうか。覚えておくと、現代社会に張り巡らされたトラップを避ける事ができる、、、かも。
影響力の武器 第4章 社会的証明(集団の影響力)
社会的証明と書くと、なんだか難しい気がしますが、そういう事ではありません。要は「人はなぜ集団に流されてしまうのか」というテーマだという事です。それを社会的証明と言っています。
集団に流される時は2つの条件を満たしている時です。それが「類似性」と「非日常性」です。まずは、集団の影響力の強力っぷりから説明し、そのための条件である2つについて書いていきます(^^)
集団的圧力の作用・代表例ドリフ笑い
テレビ番組で演出として使われる録音された笑いが好きか嫌いか?
この本の著者が周りの人たちに聞いたところ、誰もが批判的でした。笑い声を絶え間なく流しつづけ、わざとらしく場を盛り上げているテレビにみんな批判的です。
それなのになぜ、テレビ番組の制作者たちは、あの笑い声をこれほど頻繁に使うのか?
答えは、単純かつ合理的。
きちんとした実験から、笑い声に効果がある事がはっきりしているからです。
笑い声があるほうが、観客の笑いの回数、長さがアップするという実験結果があるそうです。
ジョークがつまらない時ほど効果がアップするとの事(笑)
200年前からあったサクラという仕事
200年前のオペラ鑑賞では、当然のようにサクラを使っていました。泣きのスペシャリスト、泣き師。合図があれば、すぐに大声で泣けるという特殊能力の持ち主です。叫び屋は合図があると興奮した声で、「アンコール」と絶叫できました。さらに、勉強になるのは、叫び屋たち自身が自分達がサクラである事を隠そうともしない事です。ちょうどドリフ笑いと同じであからさまです。それどころか、サクラ派遣会社は新聞紙に広告を載せていました。
<サクラ値段表>
登場の時の喝采 1リラ
演技中の強烈な喝采 15リラ
いかなる犠牲もいとわない「アンコール」 50リラ
ものすごい大歓声 要相談
ちっとも隠す気がありません(笑) あと、何だよいかなる犠牲もいとわない「アンコール」って、、、、、。
無意識に笑わせる事までできてしまう影響力
こういう歴史やデータから、番組制作者のやっている事は筋が通っている事になります。みんなが笑っているので、自分が笑う事も正しい事だと反応してしまうのです。
偽物の笑いだとわかっているはずなのに、影響を受けてしまうという事です。ただし、2016年になった現在は、ドリフ笑いを使っているテレビを久しく見てません。もうちょっと進化していて、トーク番組なんかでスタジオに観客を入れ、実際の笑い声を撮っています。本番が始まる前に、前説と言われる、観客を温める漫才、漫談を行い、本番でより笑い声を撮れるように工夫しています。リアルな笑い声を聞かされる事で、テレビの前の人も笑いやすくなります。影響を無意識に受けてしまう集団の影響力は、ある行動をする人が多いほど、それが正しい行動だと判断します。実際、僕たちは日ごろから多くの小さな判断と行動を繰り返しています。そのため「みんながやってるし、この選択でいいだろう」は、スピーディに行動できる考え方で、よく使いがちです。しかし、この方法を悪用する人に引っかかりやすくなります。
バーテンダーと教会の手口
海外の飲食店で「はチップを払うのが一般的です。バーテンダーはよく店を開ける前に何枚かのドル紙幣をチップ入れに混ぜておきます。それを前の晩の客が残していったチップに見せかけて、たたんだお金。つまり紙幣がバーにふさわしいチップだと印象づけます。教会の受付も、同じ理由から募金箱に前もってお金を入れておきますが、こうする事によって募金額が上がります。
広告主は、製品の「伸び率が最高」とか「一番の売れ行き」といった事を強調したがります。こうすれば、製品の良さを直接わからせる必要が無いからです。多くの人がそう考えていると伝えれば、それが買う理由になります。
セールスコンサルタントは、新米セールスマンに、この原理をまず教えます。「自分で何を買うか決められる人は全体のわずか5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちです。ですから、私たちがあらゆる証拠を提供して人々を説得しようとしても、他人の行動には適わないのです。」
子供の対人恐怖症を治すには
集団の影響力は、子供にも非常に有効です。ある心理学者が行った研究では、内気な子供の対人恐怖症を治すために映画を見せるという手法を使っています。小さいころにクラスの輪に溶け込めず、長期に渡り孤立化。そういう子供はどこにでもいます。成人しても社会的に快適な生き方がしにくくなるのではとその心理学者は心配しました。そして、この行動パターンを一辺させるために、ある映画を作りました。
どの場面も、まず一人ぼっちの子供が、何か集団で行動しているほかの子供たちを眺めるところから始まり、やがて積極的にその活動に参加。最後にはみんな楽しそうにしているところで終わります。この心理学者は、四つの幼稚園から選りすぐりの内気な子に対して、映画を見せました。その影響は実に強烈でした。引っ込み事案だった子供が普通の子供と同じように、よく仲間と交わるようになったのです。6週間後に様子を見に行くと、映画を見なかった子供は内気のままだったのに、対して、映画を見た子供はリーダーシップを取り始めていました。「ちょっと話ができすぎない?」と思いましたか?大丈夫です。僕もです。ただ、同じ年頃の同じ内気だった子が心を開いていく事でハッピーになっていくという過程を見せる事は凄く有効なようです。その理由はこれから書いていきます。ポイントは自分と似た人の影響を受けるという点です。
影響力を身につけた営業マンの話
ある聖書販売の営業マンがいました。売上を増やそうと、あれこれ試行錯誤していました。すでに商品を購入している客の名前を織り交ぜるようにしたところ、売上が伸びました。「お隣のジョンソンさんがこのセットを購入したいと思ったのは、子供たちに聖書の物語を読んであげたかったからでした」という具合にです。そのアプローチにしてから売上が62.3%もアップしたそうです。
しかし、その後さらに次の段階に到達します。
人の名前を使った事で、逆に売り損なったパターンを分析した事です。ある日、主婦に営業を行っていた際、その方は元々聖書に興味があったようです。人の名前を使わずとも契約できそうでした。そのときダメ押しとばかりに、「あなたの友人のメアリーとビル夫妻も買ってくれましたよ。」と言いました。しかし、「メアリーとビルも買ったの、、、、そうねじゃあ私も主人と相談してから買わなくちゃ」
似た人の名前だけを出す
夫婦の話をした事で、うかつにもすぐに買わなくていい理由を与えていたのです。「まずは主人と相談しなくちゃ」
しかし、もしも彼女と似た主婦が何人も本を買っていたら、彼女も買っていたはず。
そこから、この営業マンはさらにアプローチを改善しました。主婦に営業する時は、ほかの主婦の名前だけを。男性に売り込みをかける時は男性の名前だけを。
この営業マンの売上は119.67%も伸びたとの事です。倍以上ですね。
集団の影響力の正体と条件
集団の影響力に人はなぜ陥ってしまうのか?その原因の一つに失敗しても、「だって他の人も同じ事してたし、、、、」という言い訳をしやすいという事です。なにかを判断した時に伴うはずの責任が薄まったような錯覚があります。
キャサリン事件~目撃者が多いほうが助からない?~
1964年、ニューヨークでキャサリンという女性が殺害されるという事件がありました。
仕事帰りに暴漢に襲われ、アパートの前殺害されました。問題は大勢の人の前で殺人が行われていた事でした。犯人は35分のあいだに、三回、路上で逃げ惑うキャサリンを襲い、ついにナイフで殺害してしまいました。信じられないことに30人も住んでいるアパートの住人は窓から見ているだけで、通報すらしませんでした。実際窓の明かりがついた時点で犯人はいったん逃げたそうです。しかし、誰も助けに来ない上、警察がくるような雰囲気もないので、すぐに戻ってきてキャサリンを殺害しました。これは、当時大きなニュースになりました。殺人がではなく、「なぜ30人見ていたのに、助けられなかったのか?」という点で衝撃を与えました。
、、、、、、、、、なぜだと思いますか?
ポイントは30人も見ていた「のに」ではなく、30人も見ていた「ので」通報しなかったという事です。助けられそうな人がほかに何人かいれば、一人一人の個人的な責任は少なくなると錯覚します。「たぶん誰かが、助けるか、助けを呼ぶだろう」と考えるので、結局誰も助けないという結果になるのです。つまり、責任が薄まる事で集団に流されてしまうという事です。
あなたが集団に流されやすいのはどういう状況か
責任が薄まるという意識が集団に流される心理を生むという事を書きました。ただ、この事件にはもっと重要なポイントがありました。非日常で特殊な状況下である時、人は集団に流されやすくなるのです。多くの場合、緊急事態というのは、それが緊急事態だとはっきりわかるわけではありません。道に倒れている男性は、心臓発作を起こしたのかもしれないし、酔って眠っているだけかもしれません。となりの部屋が騒がしいのは、警察を呼ばなければならないような、暴行が行われているからかもしれませんし、たまたま派手に喧嘩しているだけかもしれません。そういう非日常的で不確実な状況の時、僕たちは周囲を見回して、他の人々の行動を参考しょうとします。それが自然な反応です。
ただ問題は、、、、、。
その出来事を見ている他の人々もやはり他の人を参考にしようとしているという事です。そのため、周りを見る事だけで何もしないという状況に陥ってしまいます。
どうしていたらキャサリンは助かったのか?
ここまで状況を分析してきてやっと、どうやったらキャサリンは助かっていたのか?という話ができます。まず、緊急事態だという事をはっきりと伝えなければなりません。意外と緊急時は悲鳴を上げるだけで、「助けて」という言葉は出てこないようです。「助けてほしい」事を伝えなければなりません。しかし、それを叫ぶだけでは不十分です。その他大勢に伝えるかたちになると、責任が薄まり、対処してもらえないかもしれません。そのような時、集団から一人を分離しなさい。という事になります。一人だけを見つめ、「そこの赤いポロシャツのあなた、助けて下さい。あと警察を呼んでください。」とはっきりと伝えます。そのような場合、効果的な援助を得られる確率が飛躍的に高まる事が、研究で明らかになっています。
まとめると類似性と非日常性が流されやすい心を育てる
改めて4,717文字も書いてきた内容をギュッとまとめると、集団の影響力は強力で、その効果が発揮されるのは①自分と似た集団である事(類似性)②日常とはかけ離れ、判断が難しい状況である事。(非日常性)
最後に、競馬場の話を書きたいと思います。類似性と非日常性のどちらの条件も満たしているエピソードです。
競馬のオッズは賭けられたお金によって決まります。ある馬に賭けられる額が多いほど、オッズが下がり、その馬で勝ったとしても配当金が減ります。競馬場はレースや賭けの戦略についてほとんど知識を持ちあわせていない人がたくさんやってきます。そのため、特に出走する馬のことをよく知らない場合など、単純に人気馬に賭けてしまうことが多いのです。電光掲示板に最新のオッズが刻々と表示されるので、客はそのときの人気馬がどれなのか、手に取るようにわかります。それでは集団の影響力を使ってどのように賭けるのか?
集団の影響力in競馬場
手口は至ってシンプルです。まず、勝ちそうだと思う馬を心の中で決めます。次に高いオッズ(例えば15倍)の勝つ見込みがほとんどない馬を選びます。売り場の窓口オープン時に勝ち目のない方の馬に100ドル賭けます。するとオッズが2倍程度の人気馬が一時的に出現します。そのとき集団の影響力が動きだします。どの馬に賭けようか迷っている人は、すでに投票を終えた人がどの馬に賭けたかを調べるために電光掲示板に目を向け、人気の馬に自分も賭けるのです。そうすると、その結果を掲示板で見た客がまたその人気馬に賭けるということになり、雪だるま式に増えていくことに。その後、売り場に戻り、最初から心に決めていた本命馬に大金を賭けます。この時点で最初に仕掛けた「作られた人気馬」の出現によって本命馬のオッズはずっと高くなっています。もし勝ったなら最初の100ドルの投資は何倍にもなって戻ってきます。
この話では、出走馬に詳しくない人が競馬場に来ている事⇒非日常性 同じように掲示板を見ている人がそれを頼りに判断していく⇒類似性
という構成になっています。
集団の影響力まとめ
いかがでしたか?この膨大な量の記事にお付き合い頂き、ありがたいです。
・集団の影響力は昔から利用されてきた強力な力である事。
・人は自分と似ている人の影響を受けやすい事。
・情報の少ない、異常事態ほど、他人に流されやすくなる事。
まとめるとたったこれだけの事です。それがこの文字量に、、、、(笑)しかし、それでもこの章で出てくるエピソードの半分程度しかご紹介できてません。ご興味があればぜひ図書館へ。それでは、また。
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