損益分岐点売上を出してみる~飲食店開業シミレーションその②
前回書いた事は、
①「決算書」は、会社だけでなく、個人や世帯でも作成する事ができる。
②試しに、サラリーマン世帯の決算書を作成。
でした。
今回は、飲食店を開業する際に、自分の経済状態がどう変化するか?
という事について書きたいと思います。
損益分岐点売上を計算する。
今回は、大事な「損益分岐点売上」に絞って書きます。
ちなみに、飲食店以外の業種であっても、この方法でシミュレーションできます。
損益分岐点売上・・・・会社の最終損益が0になる、売上高の金額。つまり、収支トントンになる売上高。
この金額より、低いと赤字。高いと黒字。 開業当初はまずこの売上高を目指します。
計算の流れ
①まず、月々の生活費を合計する。
②開業資金の計算。月々の返済額を計算。
③開業後の毎月の固定費を計算。
④粗利率に基づき、損益分岐点売上を計算する。
言葉は難しそうですが、簡単に計算できます。
一つ一つにこだわりすぎず、まずはざっくり①~④までやってみましょう。
流れがつかめると思います。
①費用をまとめる
この計算はすぐ終わります。
前回計算した生活費
光熱費 2万円
携帯代 2万円
食費 4万円
住宅ローン返済 8万円
学費ローン返済 2万円
車ローン返済 2万円
雑費 2万円
合計 22万円
この合計を「生活費」とします。
①はこれだけです。
②開業資金の計算
お店を開業する際は、様々なお金がかかります。
店舗の内装・設備費 800万円
厨房機器類購入費 200万円
物件取得費 200万円
2~3か月分の営業資金 300万円
仮の数字を入れてあります。
開業費用は上記の数字の場合、合計1,500万円です。
この金額をどうするか?
貯金があればそれで開業できますが、手元にも預金はある程度残したいところです。
ここでは、全額借入で賄った場合を計算します。
どこから借りるか?
よく、金融機関は「実績がなくて、担保や保証人が無ければ借りられない」というイメージを持たれます。
しかし、そんな事はありません。
そのために国の制度融資や保証協会融資という仕組みがあります。
詳しくは銀行で聞いてみましょう。
借入金額 1,500万円
金利 3.5%
期間 10年
金利と期間は目安の数字です。
状況によって変わりますが、平均これくらいで計算していいと思います。
10年だと120回払いで返済になります。
1,500万円÷120=125,000円
金利 1,500万円×3.5%÷12か月=43,750円
毎月返済 125,000円+43,750円=168,750円
③開業後の固定費を計算
開業後の固定費は、
①店舗の家賃 20万円
②人件費 15万円
③光熱費 3万円
④雑費 2万円
合計 40万円
全て仮定の数字です。個別の状況に応じて数字を入れ替えて下さい。
人件費は1名をアルバイトで雇った場合の計算です。
毎月いくらお金が出ていくか?
これで、開業後に毎月出ていくお金が明らかになります。
①の生活費 220,000円
②の返済額 168,500円
③の固定費 400,000円
合計 788,500円
④損益分岐点売上を出す
毎月出ていくお金は788,500円です。
では、毎月の売上は788,500円で収支トントンになるのでしょうか?
違います。
まだ食材等の「原価」の計算があります。
つまり、売上から原料費を引いた「粗利」が788,500円ないといけないのです。
売上ー原価=固定費(788,500円)
一般的に飲食店の売上に対する原価の比率は30%と言われています。
(例えば1,000万円の売上だと、原価は300万円。粗利は700万円という事になります。)
この比率を元に損益分岐点売上を求めます。
原価率30%だと、残りの70%は固定費にいくという事です。
つまり収支トントンにするには、70%=788,500円になる売上という事になります。
788,500円÷0.7=1,126,428円
788,500円が毎月かかるのであれば、1,126,428円の売り上げが必要という事です。
これが損益分岐点売上です。
さらに、週一回の休業日だと仮定すると、毎月25日程度の営業日です。
1,126,428円÷25日=45,057円
一日当たり平均で45,057円の売り上げが必要という事です。
これでお店を維持するために最低限必要な売上が整理できます。
一日当たりの売上・・・45,057円
毎月の売上・・・・・・・・1,126,428円
という事です。
損益分岐店売上を活用する
これで、「毎月出ていくお金」から逆算した「毎月最低限必要な売上」がわかりました。
月1,126,428円だと、ぼんやりした印象ですが、一日45,057円だとイメージしやすいかと思います。
この金額をそのまま当初の目標に設定します。
大事な事は最低限必要な売上に対して、実際の売上は届いているか比較する事です。
開業後に毎日の売上を計算し、45,057円より上なのか下なのかをはっきりさせます。
どれぐらい足りないのか、どれぐらいオーバーしているのかをはっきりさせます。
飲食店を開業した後に陥りがちなのが、オーナーの主観でおおざっぱに売上を評価する事です。
毎月出ていくお金から逆算していないため、「まあ月1,000,000円売上が上がれば順調にいってる方かな」等の
認識で運営を行ってしまいます。
そうなると、徐々に資金繰りが苦しくなっていきます。
そうならないためにも、「毎月出ていくお金」と「毎月必要な売上」をきちんと把握して、開業計画を作成しましょう。
また、既に開業している飲食店やそれ以外の業種についても、この計算式で求められます。
自分の認識よりも必要な売上が大きい場合が多く、驚かされたりします(苦笑)
※今回のコラム、異常に長くなり、申し訳ありません。ここまで読んで頂き、ありがとうございました(^^)
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